歯科・クリニックのLINEで送るのは「4つの連絡」
この記事では、医院がLINE公式アカウントで送る連絡を、予約と来院に直接関わる次の4つに絞ります。 どれも患者さんごとに違う日付を起点に送る連絡で、送る相手と日付はLINEの外にある予約やカルテの情報で決まります。
- 予約確認予約を受けた直後日時と変更の方法を手元に残す
- 前日リマインド予約日の前日予約を思い出してもらい、来られないなら早めに知らせてもらう
- 来院後のフォロー来院の翌日〜次回予約まで困ったときの連絡先と次の予約の入口を伝える
- リコール医院が決めた次回の時期の前定期検診の時期を知らせ、予約につなげる
顧客の段階ごとに来店促進を組み立てる考え方は、業種をまたいで LINEで来店促進するにはにまとめています。 この記事は、医療機関に当てはまる部分を予約の前後とリコールに絞り、医療広告と個人情報の注意点を加えたものです。 来院後の文面はクリニック向けF2テンプレート、 時期に合わせた案内の型は来店周期リマインド、 医院での使い方の全体像はクリニックの活用シーンを参照してください。 新しい患者さんを集める施策は扱わないので、友だちを増やす方法は友だちを増やす7つの施策をご覧ください。
LINE公式アカウントの標準機能でできる範囲
分かれ目は予約の情報がLINEの中にあるかどうかです。 予約サービスと連携した「LINEで予約」を使っていれば、予約した人をオーディエンスにして配信の対象にできます。 電話や別の予約システムで受けた予約は、LINEの側に情報がありません。
- LINEで予約(予約サービスとの連携が前提)で、メッセージ・リッチメニュー・プロフィールから予約を受ける
- 予約オーディエンス(みなし来店/すべて/キャンセル)を配信の対象にする
- オーディエンスを開始条件にしたステップ配信で、1〜30日の待ち時間を置いて送る
- 日時を指定して予約配信する
- チャットで1対1でやりとりする(配信通数にカウントされない)
- チャットにタグを付け、チャットタグオーディエンスにする
- 予約日の前日に、その予約の患者さんだけへ自動で送る(該当する設定がマニュアルに見当たらない)
- ステップ配信の1回の待ち時間を30日より長くする
- 電話や他のサイトで受けた予約を予約オーディエンスに含める
- 無料の範囲で、1つのチャットルームに2個以上のタグを付ける
- オーディエンスを期限なく使う(チャットタグ・ウェブトラフィック以外は作成から180日間有効)
出典:LINEヤフー for Businessの公式マニュアル「LINEで予約」・「オーディエンス」・「分析 - 予約」・「ステップ配信」・「メッセージ配信を作成する」・「チャット」、料金プラン(2026年11月時点)。
LINEで予約と予約オーディエンス
LINEで予約は、公式マニュアルで「LINE公式アカウントから店舗の来店予約ができる機能です。」と説明され、 「予約サービスと連携が完了しているLINE公式アカウントで利用が可能となります。」とされています。 予約フォームはメッセージ、リッチメニュー、チャット、プロフィールなどに置け、 プロフィールに置くと「友だち追加しているユーザー以外からも予約を受けることができます」と記載されています。
予約オーディエンスで選べる予約タイプは、「みなし来店」(キャンセルされずに予約日を過ぎた予約)、「すべて」(みなし来店とキャンセルを含む)、「キャンセル」の3つです。 期間は変動期間(直近1〜180日)か固定期間(1日前から1年前までの範囲で開始日と終了日を指定)で選びます。 医院で使うときは、次の3点を前提にしてください。
- 反映されるのはLINE経由の予約だけ——マニュアルには「予約件数は、LINE公式アカウント連携後のデータのみオーディエンスデータとして反映されます」とあり、LINE公式アカウント以外で行われた予約は「分析 - 予約」にも反映されないとされています。
- みなし来店は来院の記録ではない——連絡なしに来なかった患者さんも含まれます。
- 期間の基準日が書かれていない——予約日と予約を受けた日のどちらで数えるかは、マニュアルに明記が見当たりません(2026年11月時点)。作ったオーディエンスの人数が想定と合うか、確かめてから使ってください。
「予約日の前日」はステップ配信では表せない
ステップ配信の待ち時間は、起点(友だち追加かオーディエンスへの追加)から先へ数えます。 「予約日の前日」のようにこれから来る日付から逆算するタイミングは組めません。 予約配信で日時は指定できますが、「明日予約がある人」に絞るオーディエンスのタイプはありません。
自院で対象者を抜き出してユーザーIDアップロードを使う方法もありますが、 ユーザーIDはLINE Developersのドキュメントで「LINEでの友だち検索に利用するLINE IDとは異なります」とされ、取得手段として示されているのはWebhookとMessaging APIのエンドポイントです (ユーザーIDを取得する、2026年11月時点)。 そのため、管理画面の操作だけで患者さんとユーザーIDを結びつけるのは難しいと考えられます。 実現手段は次の3つに分かれます。
来院後のフォローは予約オーディエンスとステップ配信で自動にできます。前日リマインドとリコールは、チャットでの個別連絡やタグの付け替えといった手作業が残ります。
予約確認や前日の通知をLINEに送る仕組みを持つ予約サービスもあります。LINE公式アカウントのマニュアルには記載が無いため、契約している予約サービスの仕様で確認します。
予約日時や次回の時期を配信の側に取り込めば、患者さんごとの日付で自動にできます。費用と、患者情報を扱う体制の整備がかかります。
予約前の配信 — 予約確認と前日リマインド
予約確認:日時の行き違いを防ぐ
予約確認は、受付や電話で伝えた日時を患者さんの手元に文字で残す連絡です。 内容は、予約の日時、医院の名前、変更・キャンセルの方法、当日の連絡先に絞ります。 LINEで予約のマニュアルには、予約が入ったときに患者さんへどのアカウントから何が届くかの記載が見当たりません(2026年11月時点)。 予約サービス側に確認の通知があるなら、それを使います。
電話で受けた予約は、友だち追加している患者さんであれば、受付がチャットで日時を送れます。 チャットの送受信は、料金プランのページで配信通数に「カウントされない」ものに挙げられています。 ただし、管理画面からチャットルームを新しく作れるのは「※認証済アカウントのみ」で、 未認証のアカウントでは、患者さんからメッセージを送ってもらったことがある相手としかチャットできません。
前日リマインド:来られない場合の連絡も早める
前日リマインドの役割は、予約を思い出してもらうことと、来られなくなった患者さんに前日のうちに知らせてもらうことです。 後者があると、空いた枠を別の患者さんに回す時間ができます。 そのため文面には変更・キャンセルの方法を入れ、受付が連絡を受けられる時間帯に届くようにします。
○○様
明日のご予約のご確認です。〇〇歯科医院です。
日時:◯月◯日(◯)◯時◯分
ご都合が悪くなった場合は、下のボタンから変更・キャンセルのお手続きをお願いします。お電話(000-0000-0000)でも承ります。
(ボタン:予約の変更・キャンセル)
診療の内容は書かない例にしています。スマートフォンの通知や家族と共用の端末で、本人以外の目に触れることも考えられるためです。
送り方は、予約の受け方で決まります。
- 予約サービスに前日の通知がある——それを使います。LINE公式アカウントからも送ると、差出人の違う同じ連絡が2通届き、患者さんが迷います。
- 標準機能だけで送る——受付が前日に、翌日の予約の患者さんへチャットで送ります。通数は使いませんが、予約が多い医院では作業の負担が大きくなります。チャットのマニュアルは、チャットを始めるときに避ける使い方として「広告や宣伝目的でチャットを送信すること」(例:新規サービスや商品の紹介、キャンペーンのお知らせなど)を挙げているので、リマインドに自費メニューの紹介などを添えないでください。
- 予約システムと連携する——予約日時を配信の側に取り込み、前日に自動で送ります。たとえばEngage Ch®では、予約システムの予約日時や受診メニューを取り込み、前日リマインドや次回予約の案内に使えます。取り込めるデータは外部連携にまとめています。
友だちになっていない患者さんへの連絡
LINE Developersのドキュメントには、「電話番号を指定することでユーザーにメッセージを送信できるサービス」としてLINE通知メッセージが載っており、 友だち追加していないユーザーにも送信できると記載されています。 ただし「所定の申請等を行った法人ユーザーのみ」が使え、「営利目的および広告目的のものは送信できません」とされています (LINE通知メッセージの概要、2026年11月時点)。
来院後のフォロー — 翌日から次回予約まで
来院後のフォローは、帰宅してから出てくる「聞きそびれた」「これで大丈夫だろうか」を受け止め、次回予約の入口を示す連絡です。 翌日・3日後・7日後の3通の文面はクリニック向けF2テンプレートにあるので、ここでは組み方と注意点に絞ります。
予約オーディエンスを開始条件にする
ステップ配信のマニュアルには、開始条件にオーディエンスを選んだ場合 「開始時点でオーディエンスに含まれるユーザー、 開始後、新たにオーディエンスに含まれたユーザーが配信対象となります」とあります。 「みなし来店」のオーディエンスを開始条件にすれば、予約日を過ぎた患者さんが順に加わり、そこから待ち時間が数えられます。
マニュアルの記述から読み取れる注意点が4つあります。
- 変動期間は短くする——開始時点でオーディエンスに含まれる人も対象になるので、期間が長いと、数か月前に来院した人にも1通目が届きます。
- 来院を決めつけない文面にする——みなし来店には連絡なしに来なかった人も含まれるので、「先日はご予約ありがとうございました」のような言い方にしておきます。
- 通院中の患者さんへの重なりを確かめる——同じ人がもう一度オーディエンスに入ったときに最初から始まるかどうかは、マニュアルに記載が見当たりません(2026年11月時点)。続けて通う患者さんに同じフォローが繰り返し届かないか、公開後しばらく確かめてください。
- オーディエンスの有効期限に気をつける——オーディエンスは(チャットタグ・ウェブトラフィック以外)「新規作成から180日間有効です。」とされ、ステップ配信のマニュアルには「利用中のステップ配信に設定されているオーディエンスが利用できなくなった場合は、シナリオが停止します」とあります。期限が近づいたときの扱いを管理画面で確かめ、対応の予定を入れておく必要があると考えられます。
分岐を含むステップ配信の組み方は、LINEシナリオ配信の作り方で扱っています。
自動で送るのは「誰に届いてもよい案内」だけ
ステップ配信は、対象の全員に同じ文面を送ります。 処置後の注意やお薬の飲み方のような個別の指示は、診療の場で医師・歯科医師や担当者が伝え、自動の配信には入れないほうが安全です。 自動で送るのは、連絡先、診療時間、緊急時の案内、よくある質問ページのような誰に届いても困らない内容にします。
返信が来たらチャットで受けます。 チャットの応答時間を設定しておくと、時間外は応答方法を切り替えられるとマニュアルに記載されています。 時間外の自動の応答で、急ぎの場合の電話番号や、緊急時は救急を利用するよう案内しておくと、返信を待たせたままにせずに済みます。 自動応答の作り方はLINEチャットボットで問い合わせ対応を自動化する方法を参照してください。
電話で予約した患者さんを含めるには
電話予約の患者さんは予約オーディエンスに入らないので、チャットタグを使います。 来院時に受付がタグ(例:「来院済み」)を付け、そのタグのオーディエンスを開始条件にします。 ステップ配信のマニュアルで開始条件に設定できないとされているのは、ビジネスマネージャーから共有されるオーディエンスです。 料金プランのページによると、タグの上限は基本機能(0円)で種類が最大5個・チャットルームごとに1個、チャットProオプション(月3,000円・税別)で最大300個・30個です。チャットの履歴の保存は、基本機能で6か月、オプションで5年とされています(料金プラン、2026年11月時点)。
無料の範囲では1人に付けられるタグは1個なので、「来院済み」に使うとリコールの管理には使えません。タグの用途は運用前に決めてください。 また、チャットタグオーディエンスには「タグが付与されたユーザーとのチャットルームが存在すること」が条件です。 受付で友だち追加してもらうときに、お名前を1通チャットで送ってもらう運用にすると、どの友だちがどの患者さんかを確認でき、チャットルームもその時点でできます。
リコール(定期検診の案内)の設計
間隔は医院が決め、LINEはそれを届ける
リコールの間隔は、医院が診療の方針として決め、患者さんの状態に応じて担当の歯科医師・医師が判断するものです。 この記事では「何か月ごと」という数字は示しません。 LINEの側で設計するのは、決まった時期を記録し、その前に案内を届け、予約につなげ、予約が入ったら止める仕組みです。
来店周期リマインドの「来店間隔の中央値から周期を決める」方法は、店の側が記録から周期を読み取る業種向けの考え方です。 医療では周期そのものが診療の判断なので、借りるのは「時期の何日前に送るか」「どの期間で効果を測るか」の部分にとどめます。
「次回予約を取った人」と「時期だけ伝えた人」を分ける
来院時に次の検診の予約まで取った患者さんには、リコールの案内は要りません。前日リマインドの対象になります。 案内を送るのは、次の時期だけを伝えた患者さんです。 この2つを区別しないと、予約を入れた人に「そろそろ検診の時期です」が届き、医院が予約を把握していないように映ります。
標準機能で対象を作る3つの方法
| 方法 | 対象の作り方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 予約オーディエンス | 「みなし来店」を固定期間で指定し、「◯月に来院した人」を抜き出して予約配信する | LINE経由の予約だけが入る。期間の基準日の明記が見当たらない。作成から180日で失効する |
| チャットタグ | 来院時に「リコール◯月」などのタグを付け、タグのオーディエンスに送る | 無料の範囲ではタグの種類が5個、1人1個まで。月ごとに分けるならチャットProオプションが要る |
| ユーザーIDアップロード | 予約システムやカルテから対象者を抜き出し、ユーザーIDのファイルで作る | 患者さんとユーザーIDの紐づけが前提。ユーザーIDの取得手段として示されているのはWebhookとMessaging API |
「対象から予約済みの人を除く」組み合わせには、人数の条件が絡みます。 絞り込み配信のマニュアルには「複数のオーディエンスをかけ合わせて配信する場合、オーディエンスの掛け合わせ結果が、”50人以上”かつ、“各オーディエンスに含まれる有効な友だちが50人”でなければ配信ができません。」とあります。 除外に選んだオーディエンスがこれに含まれるかは明記が見当たりませんが、1か月あたりの対象が少ない医院では成立しないことを想定しておくほうが安全です。 その場合は、対象のリストを受付が確認し、予約済みの人を外してからチャットで送るほうが確実です。 チャットタグで管理するなら、予約が入った時点でタグを外す作業までを受付の手順に入れておきます。
患者さんが増えて手作業が回らなくなったら、予約システムや電子カルテにある「次回の時期」と「次回予約の有無」を配信の側に取り込む段階です。 連携の考え方は外部連携にまとめています。 連携先が患者さんの情報を持つ以上、個人情報の扱いの確認が欠かせません(次の章)。
再案内と効果の測り方
時期を過ぎても予約が無い患者さんへの再案内は1回だけにし、責める言い方を避けて予約の入口だけを示します。 文面の型は休眠復帰(Soft)が参考になります。 反応が無い相手に送り続けるとブロックにつながりやすいので、ブロック率を下げる配信設計もあわせて確認してください。
効果は、LINEの開封ではなく予約の記録で見ます。
- 前日リマインド——連絡なしの不来院と、前日までの変更・キャンセルの件数。分母はリマインドの対象になった予約数
- 来院後のフォロー——次回予約が入った人の割合。分母は期間内に来院した人数で、配信数を分母にしない
- リコール——案内後の一定期間内に予約した人の割合。期間を毎回同じにする
ステップ配信の分析画面のステップごとの配信数・開封率・クリック率は、配信数以外は推定値とされています (分析 - ステップ配信、2026年11月時点)。 検診の案内は受診に関わる連絡なので、比較のために一部の人へ送らない方法は慎重に考え、導入前後の同じ期間を比べる方法を基本にしてください。 指標の定義はLINE配信の指標まとめに整理しています。
医療機関として確認すること — 広告規制と個人情報
医院の配信には、医療広告の規制と、診療に関わる個人情報の扱いという2つの確認事項があります。 ここでは厚生労働省と個人情報保護委員会の資料で確認できた記述だけを紹介し、個別の配信が規制にあたるかの判断はしません。
医療広告ガイドライン:LINEを名指しした記述は見当たらない
厚生労働省の「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)は、 「患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)」、医療機関の名称等が「特定可能であること(特定性)」、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する内容であること」の3つをいずれも満たす場合に医療広告に該当すると判断する、としています。 媒体の具体例には「情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)」が挙げられています。
一方、医療機関の内部の掲示や内部で配布するパンフレット等は、「その情報の受け手が、通常、既に受診している患者等に限定されるため」誘引性を満たさない、とされています。 ただし、これを「受け手が患者さんならLINEも広告ではない」と重ねることはできません。同じ厚生労働省のQ&Aには次の記述があります。
- 「当該医療機関に係る情報取得を希望した者のみ閲覧可能な状態(一般人は閲覧不可)であっても、広告規制の対象です。」(ウェブサイトについて、A1-10)
- 「患者の希望であってもメールマガジンやパンフレットは広告として取り扱われるため、広告規制の対象です。」(A1-11)
ガイドラインとQ&Aを確認した範囲では、LINEやメッセージアプリを名指しした記述は見当たりません(2026年11月時点)。 LINEの配信の扱いは内容と相手で変わりうるので、判断に迷う配信は、医院を所管する自治体(都道府県・保健所設置市・特別区)の医療広告の窓口に相談してください。 Q&Aでも「各医療機関を所管する地方自治体や保健所にご相談ください」と案内されています。
院内では、自費診療の紹介やキャンペーンの告知は、医療広告にあたる前提でガイドラインに照らして確認すると線を引いておくと、判断がぶれにくくなります。 医療広告として禁止される内容には、虚偽広告、比較優良広告(「日本一」「№1」「最高」等の最上級の表現は、客観的な事実であっても禁止される表現に該当するとされています)、誇大広告、公序良俗に反する広告、広告可能事項以外の広告、患者等の主観や伝聞に基づく治療等の内容・効果に関する体験談、誤認させるおそれがある治療等の前後の写真等が挙げられています。
出典:厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」掲載の医療広告等ガイドライン、同Q&A、医療に関する広告の窓口一覧(2026年11月時点)。
診療に関わる情報は「要配慮個人情報」
個人情報保護法は、本人の病歴などが含まれる個人情報を「要配慮個人情報」と定めています(第2条第3項)。 個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」は、医療機関等で想定される要配慮個人情報として、 診療記録に記載された病歴や「診療や調剤の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た診療情報」などを挙げています。 LINEの運用に関わる記述は、主に次の3つです。
- 取得には原則として本人の同意が要る——法第20条第2項は、例外を除き「あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない」と定めています。ガイダンスでは「書面又は口頭等により本人から適正に直接取得する場合は、本人が当該情報を提供したことをもって」同意があったものと解されるとされていますが、チャットでの相談がこれにどう当てはまるかの直接の記述は見当たりません。
- 利用目的は院内掲示などで公表する——ガイダンスは、通常必要な利用目的を特定して院内掲示等で公表し、可能な場合はホームページへの掲載等でなるべく広く公表するよう求めています。別表に例示された利用目的には、予約の連絡や検診の案内を名指しした項目は見当たらないので、LINEで連絡することを利用目的の掲示にどう書くかを確認しておく価値があります。
- 第三者に伝わる場面への配慮——ガイダンスは受付での呼び出しなどについて「患者の希望に応じて一定の配慮をすることが望ましい」としています。LINEの通知を直接扱った記述は見当たりませんが、通知画面や共用の端末で本人以外の目に触れうることは、自動の配信に病名や治療の内容を書かない理由になります。
外部の事業者に患者さんの情報の取扱いを任せる場合は、法第25条の「委託先の監督」が関わり、ガイダンスでは委託契約に安全管理措置の内容を盛り込むことや、定期的な確認が挙げられています。 医療情報システムの導入や診療情報の外部保存を行う場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」によるとされています。 予約システムやカルテと配信ツールをつなぐ前に確認してください。
出典:個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)、厚生労働省掲載の医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(令和8年4月一部改正)(2026年11月時点)。個人情報保護法は2026年7月17日に改正法が公布され、施行前の部分があります。運用を決めるときは、その時点の条文と個人情報保護委員会の案内を確認してください。
LINE公式アカウントのガイドラインと、院内で決めること
LINE公式アカウントガイドライン(最終更新日2026年9月30日)には「アカウントの運用にあたっては、各種法令、業界が定める自主基準やルールをご遵守ください。」とあり、 医療の業種では「日本国内で未承認の医薬品等」と「医薬品等の個人輸入代行」が掲載できないケースに挙げられています (LINE公式アカウントガイドライン、2026年11月時点)。
これらを踏まえ、院内で先に決めておくことは次のとおりです。
- 自動の配信に書かないもの——病名、処置の内容、検査の結果
- チャットで受ける相談の範囲——どこから受診や電話を案内するか。緊急時の案内の文面
- チャットの記録の扱い——履歴の保存は基本機能で6か月。診療に必要な内容は医院の記録に残す
- 友だち追加の直後に伝えること——あいさつメッセージ(通数にカウントされない)で、何が届くかと、通知の止め方を伝える
- 配信前の確認者——自費診療の紹介などを送るとき、誰がガイドラインに照らして確認するか
よくあるつまずき
- 来なかった患者さんに「ご来院ありがとうございました」が届く
「みなし来店」は「キャンセルされずに予約日を過ぎた予約」で、連絡なしに来なかった人も含まれます。 対処:1通目は来院に触れない言い方にする。実際の来院で分けたいならチャットタグか連携を使う
- 次回予約がある患者さんにリコールの案内が届く
予約を取った人と時期だけ伝えた人を区別しないと起きます。人数の条件でオーディエンスの組み合わせが使えない医院では特に起きやすくなります。 対処:予約済みの人を外す手段を配信前に決める。少人数なら受付が確認してから送る
- 電話予約の患者さんだけ連絡が届かない
予約オーディエンスに反映されるのはLINE経由の予約だけなので、予約の入口が電話とLINEに分かれていると、LINEで予約した人にだけ届きます。 対処:電話予約の患者さんにはチャットタグを使うか、予約の情報を一か所にまとめて連携する
- 来院後のフォローがいつの間にか止まっている
オーディエンスには有効期限があり、ステップ配信は設定されたオーディエンスが利用できなくなると停止します。 対処:オーディエンスの作成日と有効期限を記録し、確認する日を予定に入れる
歯科・クリニックのLINE活用に関するよくある質問
Q. LINE公式アカウントだけで、予約の前日リマインドを自動で送れますか?
管理画面のマニュアルには、予約日を基準に前日に自動で送る設定は見当たりません(2026年11月時点)。 ステップ配信は「友だち追加」か「オーディエンス」を起点に1〜30日を数える仕組みで、予約日から逆算できないためです。 予約サービスの通知機能を使う、受付がチャットで個別に送る、予約システムと連携して送る、のいずれかになります。
Q. リコールは何か月ごとに案内すればよいですか?
間隔は医院が診療方針として決め、患者さんの状態に応じて担当の歯科医師・医師が判断するものなので、この記事では数字を示していません。 LINEの側で決めるのは、時期の何日前に案内するか、再案内を何回までにするか、予約が入った人をどう外すか、です。
Q. 予約リマインドやリコールの配信は、メッセージ通数にカウントされますか?
送り方によります。 料金プランのページでは、メッセージ配信(絞り込み配信・ステップ配信を含む)とPush APIなどはカウントされ、 LINEチャットの送受信・応答メッセージ・あいさつメッセージはカウントされないとされています(2026年11月時点)。 通数の考え方はメッセージ料金の最適化にまとめています。
Q. LINEの配信は医療広告ガイドラインの規制対象になりますか?
この記事では判断できません。厚生労働省のガイドラインとQ&AにLINEを名指しした記述は見当たりません(2026年11月時点)。 Q&Aでは、患者の希望で配布するメールマガジンも広告規制の対象とされています。 判断に迷う配信は、医院を所管する自治体の医療広告の窓口に相談してください。
Q. 電話で予約した患者さんにもLINEで連絡できますか?
友だち追加していれば、受付がチャットで送る、来院時にチャットタグを付けて対象にする、といった方法があります。 予約オーディエンスに反映されるのはLINE公式アカウント経由の予約だけです。 友だちでない人に電話番号を指定して送るLINE通知メッセージは、所定の申請を行った法人ユーザーのみが使え、営利目的・広告目的のメッセージは送れません。
まとめ
- 送る連絡は予約確認・前日リマインド・来院後のフォロー・リコールの4つに絞る。どれも患者さんごとの日付が起点
- 標準機能で予約の情報を扱えるのはLINEで予約を連携している場合で、反映されるのはLINE経由の予約だけ
- ステップ配信では予約日の前日のような逆算のタイミングは組めない。予約サービスの通知、チャット、連携のいずれかで送る
- 来院後のフォローは「みなし来店」を開始条件に組める。来なかった人も含まれるので、文面で来院を決めつけない
- リコールの間隔は医院が診療方針として決める。LINEの側では時期の記録、案内のタイミング、予約が入った人を外す仕組みを設計する
- 自動の配信には病名や治療の内容を書かない。医療広告にあたるか迷う配信は、所管の自治体の窓口に相談する
標準機能でも、LINEで予約とチャットを組み合わせれば始められます。手作業が回らなくなったら外部連携を、医院での使い方の全体像はクリニックの活用シーンをご覧ください。
